古本屋の研究日誌

古本屋として働きながら博士号を取得するまでの軌跡

近代仏教といえば…

最近読んだ本としては、以下のものがあります。


入門 近代仏教思想 (ちくま新書)

入門 近代仏教思想 (ちくま新書)

明治になって西洋哲学が流入してきたときに、日本人がどのようにそれを受け入れたのか、そこが簡潔にまとめられていて、参考になりました。今とはまったく異なる受け入れ方、とりわけ『大乗起信論』によって、西洋哲学を受け入れたというのも何とも興味深いところです。


欧米列強の脅威に対抗しようとしてナショナリズムが起こったときに、西洋思想に対抗しうる思想として、その理論的な依り所に『起信論』が使われているというのは、前に触れましたが、面白いところです。

furuhon-ya.hatenablog.jp



時代時代によって、さまざまな受け取られ方がされているところも、まさに古典!という感じ。「原始仏教」という原理主義によれば、起信論は仏教にあらず!ということにもなりかねませんが(苦笑)、それだけ評価が分かれるのもまた古典の古典たる所以でしょう。


その『起信論』にも影響を受けた哲学者の一人、清沢満之の研究が最近では進んでいる感じです。岩波から新しい全集が出て以来、関連書籍も頻繁に出ているように思います。最近は以下の本を読みました。この本は、清沢を哲学者として捉えようとした最初の試みだと思います。なぜ、哲学者が清沢に興味を持ったのか?その辺からはじまってますが、清沢の哲学がヘーゲル哲学を土台にしていて、そこに仏教の縁起論を組み合わせ、存在論、自然哲学から人間学に至る壮大な構想を持っていたのがよく分かる内容になってます。


清沢満之の思想

清沢満之の思想




というわけで、手軽なこちらを買って、今読んでいるところです。

清沢満之集 (岩波文庫)

清沢満之集 (岩波文庫)



近刊としてはこちらもありますね。

清沢満之と近代日本

清沢満之と近代日本


西洋哲学一辺倒になるのではなく、仏教をはじめ東洋の思想的伝統をも参照し、それらを止揚しようとする試みがなされていた近代日本の思想状況に驚くとともに、非常に興味を惹かれます。もっとも、清沢の場合は、仏教を現代的に復活させようとして、西洋哲学を取り入れたという側面が強いのかもしれませんが…。


個人的には、今やってることが終わったら(or 頓挫したら 笑)、この辺をやってみたい気持ちがあります。一応、起信論を起点に、これまではインド方面に関心が向かっていましたが、それがひと段落付き次第、今度は近代日本哲学へシフトしたいです。