古本屋の研究日誌

古本屋として働きながら博士号を取得するまでの軌跡

サムエの宗論

f:id:furuhon-ya:20080705004746j:image:left次のレポートはチベット関連。その中、まずはサムエの宗論をと思い、持ってる本の中からasin:4393101472所収の「頓悟と漸悟」や、asin:4000103318などを読み出す。

サムエの宗論といえば、チベットの史書と敦煌で発見された漢文書『頓悟大乗正理決』では記述が正反対ということもあって、その当時からチベットと中国の間にはいろいろと複雑ないきさつがあったのか…とも推察されるわけです。

摩訶衍の思想といえば、万人が仏性を持っているという如来蔵思想が背景にあり、いろいろと難しいことを学んだり、修行しなくても、澄んだ心を持っているのだから誰もが悟れるということになる。不思不観ともいいますが、何も思ってはならず行ってもならない、そんな易行道なことから人気を博していたようです。実際、論争に破れた摩訶衍は敦煌に戻っても、「大徳」と呼ばれて名声を得ていたという記述もあります。

結局チベットでは漸悟であるインド系が以後正統として受け継がれることになりますが、中国禅の思想も何らかの形で受け継がれていったようではあります。ただ、それが正統ではないとすると…。ともかく、このインド仏教と中国禅との対決は、仏教の本質とは何か?ということについていろいろと考えさせられます。

カマラシーラといえば、今月のスクーリングで『修習次第』をまた読むことになります。先日、その梵文プリント*1が郵送されてまいりました。

*1:Tucci,G.:Minor Buddhist Texts, Roma,1958