話題の新書を立ち読み。生命を分子レベルまでいくら分けても、生命は理解できない、しかし、分けなければ人間は理解できない・・・という無限遡及のような問題がそこにはあるんだと思います。要素還元主義的な機械論的生命観に拠って立って、今の脳死とか臓器移植の問題があるんだと思いますが、そういった科学が陥りがちな“罠”について、この著者は批判的な意見をお持ちです。
しかし、「世界は分けてもわからない」というので、ミリンダ王の問い(参照)を思い出してしまうのは私だけでしょうか?
生命を分けてもわからないという先ほどの話をミリンダ王風に表現すると(笑)…
「大王よ、心臓が生命なのですか」
「尊者よ、そうではありません」
「脳が生命なのですか」
「尊者よ、そうではありません」
「前頭葉が…側東葉が…頭頂葉が…後頭葉が…小脳が…生命なのですか」
「尊者よ、そうではありません」
「大王よ、いったい肺および胃および膵臓および肝臓および大腸および小腸および腎臓が生命なのですか」
「尊者よ、そうではありません」
「大王よ、それなら細胞・細胞膜・染色体・細胞質・遺伝子が生命なのですか」
「尊者よ、そうではありません」
「大王よ、それなら私は質問しても質問しても生命というものを発見できません……」
このミリンダ王の問いからは、要素還元主義よりも相互関係性、縁起という点がクローズアップしてくるわけですが、先ほどの福岡氏によっても同じような結論が導き出されるようです。それは、生命を動的平衡という原理でもって捉えるということ、つまり、部品を取り替えれば車が動くみたいな生命観ではなく、構成要素間の相互関係性として捉えるとでもいうのでしょうか。何だか仏教的な世界観とも対応するようにも思えますが、そのように仏教思想と最新の科学が呼応するというのは、よく耳にすることではありますね。
ミリンダ王の問い―インドとギリシアの対決 (1) (東洋文庫 (7))
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