古本屋の研究日誌

古本屋として働きながら博士号を取得するまでの軌跡

正倉院

今日から正倉院展も始まったようですが、それに合わせたかのように(!?)、こちらの新刊が出たようです。今日書店に行ったら平積みされてました。

現在正倉院には6点のガラス器があるそうですが、従来それらは752年の大仏開眼供養時に納められたものと考えられてきたようです。しかし、著者によれば、一つを除いては、異なった時代(江戸や明治にまで下るものも)に異なったルートで我が国にもたらされ、納められたようです。そればかりか、各時代の全奉献品の記録を調べることで、奈良・平安時代には一つもガラス器は実在せず、その後、時代状況によって増減するという、複雑な歴史的背景も分かると言ってます。また、実在作品から、それが作られた場所、時代状況、生産方式などのデータを読み取ることができ、そこから東西交渉の実像が見えてくるというのも興味深いところです。


しかし、鎌倉時代に24個あったガラス器が江戸時代初期には3つしかないというのは、それだけ流出していったということなんですが、何だか、正倉院の警護を司る隱密・呪術集団「遊部」みたいな話になってきて、こちらも興味深いところです…。


遊部〈上〉遊部(あそべ)〈下〉 (講談社文庫)