仏耶一元、両部耶蘇

今日は佛大の中間発表会でしたが、事情があって行けませんでした。次回は行かないとな…と思いつつ、その頃には私ももう一度発表できるくらいにしておきたいものです。


霊獣―「死者の書」完結篇ところで、先日買ったこちらの本、かなり面白かったです。特に藤無染とゴルドン夫人の箇所が。藤無染(ふじむぜん)とは、明治の末、仏教革新の気風が高まる中、雑誌「新仏教」の周辺グループにいた浄土真宗僧侶で、同性愛者であった折口信夫の相手方。キリスト教の神秘主義的解釈にもとづいて仏教を理解し、ブッダの生涯とキリストのそれとが同一であることを、その著『英和対訳 二聖の福音』で示したようです。


一方で、高楠順次郎が英国留学中に同門であったゴルドン夫人も、無染同様にシリアに生まれたキリスト教・異端ネストリウス派の神秘主義思想に惹かれ、ブッダとキリストが同一であることを確信していた。弥勒を介して両者が繋がり、それが空海によって理解されてその教えの中に隠されているのだ、と。来日した折には京都のホテルの一室で研究に没頭し、著書も数冊刊行されるようですが、この著者によれば、ゴルドン夫人と藤無染とは必ずどこかで出会っているはず、らしい。そして、ゴルドン夫人は無染にこう告げたであろうという推測を述べられてます。

空海が将来した真言密教とは、仏教の教えとキリスト教の教えが西域の砂漠で一つに融合してなったものなのだ。だから曼荼羅の中心に位置し、生きとし生けるものすべてに生命の光を与え続けている太陽神、大日如来とは、仏教の秘密の教えに言う、この世界のすべてのものに内在しつつすべてを超越する唯一の神であり、それは同時にキリスト教の秘密の教えに言う、この世界から逃れつつもこの世界に生を享けたすべての人間に光の種子を宿らせ、光の世界への復帰を約束した神に他ならない。


こうしたゴルドン夫人と藤無染の思想が、無染を通じ折口信夫の宗教観に影響を与え、『死者の書』とその続篇を書かせたのではないか。折口が、縄文時代にまで遡る古代人の太陽を巡る神話的思考と、仏教の浄土思想をひとつにまとめあげ、それをさらに東方キリスト教やペルシアの太陽神信仰へ拡大する、いわば人類の普遍的思想を再構成しようとしていたという仮説は、そんな藤無染とゴルドン夫人の邂逅を背景にかなり信憑性があるもののようにも思えます。

初稿・死者の書

初稿・死者の書


こちらの書評(参照)は参考になります。

釋迢空ノート (岩波現代文庫)

釋迢空ノート (岩波現代文庫)


この本によって、折口研究は一変したらしい。藤無染に関しても明らかになったようです。


ちなみに、折口が『死者の書・続篇』で真似た、ゴルドン女史の『弘法大師景教』は近代デジタルライブラリーで読めるようです(参照)。