古本屋の研究日誌

古本屋として働きながら博士号を取得するまでの軌跡

中村先生と井筒先生

お久しぶりです。諸般の事情により、あんまり勉強出来てない状況がしばらく続いてます。やっぱり、勉強は若いうちにやるべきですねぇ。中途半端に歳取ってからやろうとしても、なかなか思うようにできないものです。今までは騙し騙しやってきましたが、こういう状態がまだまだ続くようなら、それ以上は多分力尽きてるかと思います…(苦笑)。


さて、来月から井筒俊彦全集が新しく刊行されるそうです。中央公論社から前に出ていた著作集は、古書でもかなり高くなっていましたので、新たに出る全集は是非とも揃えたいところ。

アラビア哲学 (井筒俊彦全集 (第一巻))

アラビア哲学 (井筒俊彦全集 (第一巻))

中村元先生と並んで、まさしく巨匠という名がふさわしい方ですが、共に東西の哲学的な関わりをテーマになさってました。ぴったりと同じ時代を生きられたお二人ですが、何らかの交流はあったのでしょうか?あまりあったようには聞かないのですが・・・。独立した東西の思想がそれぞれ相似た思想史的発展を辿る、そんなところに注目して、普遍思想史という構想を抱かれた中村先生に対して、井筒先生は、東洋に普遍的な元型のようなものを探求し、意識や言葉の深層に下りていかれました。

『意識と本質』の後記には、我々日本人の表層意識は西欧化しており、ましてや哲学ともなれば、西洋的な枠組みに陥らざるを得ないけれども、その深層まで西洋化しているわけではなく、日本人の実存の中に西洋と東洋が融合していると言われてます。つまり、日本人が東洋哲学の根源を一度自分の意識に内面化して考える、それだけで東西の比較哲学になってしまうといわれてます。

こうした方法論の違いはあったにせよ、両巨匠の目指していたところは重なる部分も大きかったのではないか?そう思います。興味深いところです。

6月に開催された比較思想学会の40周年記念大会では、『井筒俊彦―叡知の哲学』の著者である若松先生による「中村元井筒俊彦」という講演がありました。私は聞きに行けませんでしたが、かなり気になるところです・・・。いずれ、文字化されたものを読んでみたいと思います。

井筒先生の蔵書については、すでに井筒俊彦文庫目録というのが刊行されてますが、中村先生は松江の記念館で、その蔵書の一部が公開されてます。今月末に松江に行ってまいりますので、是非とも立ち寄ってみたいなぁと思います!あんまりゆっくりはできないと思うのですが。


三田文學 2009年 02月号 [雑誌]

三田文學 2009年 02月号 [雑誌]

たまたまこちらの「井筒俊彦特集」を購入してしまいまいした。amazonでは買えませんが、まだ出版社に在庫してるそうなので、ご関心ある方は是非どうぞ