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哲学の三つの伝統

1974年に出たこちらが昨年末に岩波文庫入りしておりました。

比較哲学の中では、古典ともいえる著作ですし、元版はすでにどこかへ行ってしまったので、改めて購入して読んでみました。著者は京大の先生であり、解説の中で言われてますが、当時の京大には、田中美知太郎(ギリシア哲学)、高田三郎(中世哲学)、長尾雅人(仏教学)、吉川幸次郎(中国文学)…といった錚々たる方々がおられましたので、その方々との対話の中から本書は生まれたということなんでしょうね。

ともかく、本書によれば、中国、インド、ギリシア、それぞれに共通する点、相違点が示され、大まかな伝統というのが示されます。インドの弁証法的な議論が、修辞法的な表現を好む中国に入って、どう変容するのか?イメージとしては、龍樹の『中論』に見られる弁証法的議論が、荘子のような文学的な表現になってしまうということなんでしょうが、これも仏典の漢訳の大きな特徴といえるのかもしれませんね。


あとは、紀元前6世紀頃にギリシア・インド・中国でほぼ同時に哲学が誕生したといわれますが、その時代がヤスパースのいう「枢軸時代」(参照)だったというのも非常に興味深いところです。なぜ別々の地域で同時並列的に生まれたのか?各々の開祖とされる「聖人」は果たして実在したのか?あるいは、後代の人たちが作り出したフィクションにすぎないのか?社会学的には、都市国家が成立して、ある一定の文化的レベルに達していた等の理由が揃って、初めて哲学という人間の営みが生まれたということなんでしょうが、各々の「聖人」の生涯が謎につつまれてるところまで共通するというのも面白いところです。

よく言われる「世界の四聖」というのは、その人選はともかく、明治期の日本で言われだしたことのようですが、同様なことはヨーロッパでは結構古くから言われてたらしいですね。『世界の三大詐欺師』なんて地下文書が出回ってたというのは耳にしたことがあります。