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テクストを疑え!

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テクストとは何か:編集文献学入門

テクストとは何か:編集文献学入門

副題として「編集文献学」という、ちょっと聞き慣れない言葉があります。編集文献学とは、もっぽら近現代のテクストが対象で、古典文献学としては「校訂」という方が馴染み深いですね。どちらも原語(ドイツ語)としてはeditionsphilologieのことだそうです。

古代・中世の写本テクストの場合と近現代のテクストの場合とでは、状況は大きく変わってきます。かたやオリジナルはすでに失われている、かたやオリジナルはいくつもある(印刷前の原稿、初版、改訂版・・・)。校訂というと、その先にある、著者自身によるオリジナルな決定版を確定するという、ある意味理想主義的なイメージにもなりますが、近現代のテクストが示しているように、そもそもその「オリジナル」とは一つだったのか?と本書は問いかけます。多様なテクストから唯一のオリジナル・テクストを復元するというのはそもそも意味があるのか?むしろテクストは最初から多様であり、可変的なものだったのではないか?近現代の編集文献学によって、そのような反省がなされたといわれています。

具体的に、第一章ではプラトンの著作集を例として、その校訂テクストの歴史と新しいテクストの提示までの過程が挙げられていて、参考になります。古典を読むとはどのようなものか?テクストはただ与えられたものを読むだけでなく、各読者がテクストを編集し、校訂し、テクストを疑い、底本とは異なる読み方を取るなど主体的に読むことが求められています。というか、そのような文献学的なスキルを身につけなければ、古典を読むということはできないのではないでしょうか。取り上げられてるのは、プラトン新約聖書ゲーテシェイクスピアカフカムージルなど、西洋の作品のみですが、もっと広く文献学をやろうとする人にとっての良い入門書だと思います。