声の文化と文字の文化

 こちらに所収されている「大乗仏教の成立」では、下田先生が大乗経典の起源について書かれてます。

世界哲学史2 (ちくま新書)

世界哲学史2 (ちくま新書)

  • 発売日: 2020/02/06
  • メディア: 新書
 

 大乗仏教の起源については、いまだ定説がなく、学会でも議論が盛り上がってます。これまでの説では、大乗経典に相応した教団があったのだろうという(暗黙の)前提があったのですが、どうもそうではないんじゃないかという見方が近年の主流です。

 

大乗経典の方が先に成立していて(古いもので紀元前後)、それに相応した教団というのは、後代(5、6世紀)になってようやく成立したといわれてます。それについては、書写経典というのがキーポイントで、知の伝承媒体が声から文字へと転換することで、仏教の知識のありようが劇的に変化し、そこに大乗仏教の起源も関係してくるのではないかということなんです。

 

その辺は、こちらに詳しいということなので、読んでみたいです。

声の文化と文字の文化

声の文化と文字の文化

 

 

 下田先生の注目の近刊はこちら。

仏教とエクリチュール: 大乗経典の起源と形成

仏教とエクリチュール: 大乗経典の起源と形成

  • 作者:下田 正弘
  • 発売日: 2020/04/22
  • メディア: 単行本
 

 

 私が読んでるのは中期大乗経典なので、大乗仏教の起源問題とは直接的には関係しませんが、その担い手、経典を作成していった人がどういう人々だったのかという意味では何らかの示唆を得られるのでは…と思ってます。

再出発~再入学へ

私が所属していた大学院の規定では、単位取得満期退学後3年以内に博論を提出できない場合は、(課程の4年目に)再入学できることになってます*1。私は来年度がその満退後の3年目になり、博論を提出するか、改めて再来年度に再入学を目指すか、という選択をすることになります*2

 

2020年度に博論提出は無理ですので(笑)、2021年度から再入学するのが最も現実的な選択となりそう。そこから3年、ちょうど私の先生があと4年で退官ということなので、何とかその期間内に博論を提出しなければ…という状況になりました。とりあえず、その間に論文を1、2本出して、それで博論執筆するつもりです。途中、休学を3年取りましたから、可能な限りの最長期間、在籍することになりそうです(^^;

 

我ながらよくやるよ…と思いますが(笑)。

 

そういう気持ちになったのは、前にも触れたこちらの本を読んだのが大きいと思ってます。

在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活

在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活

  • 作者:荒木 優太
  • 発売日: 2019/09/06
  • メディア: 単行本
 

 

本書を読んで、あきらめるのはまだ早いな、という結論に至りました。各執筆者がそれぞれの研究内容を熱く語り、知的欲求を満たすために、生活上の困難もいとわずに研究生活を楽しまれているのがよく分かり、大変刺激を受けました。本書によって、すっかり「在野研究者」という地位が確立されましたね。私が仕事をしながら、通信の大学の門を叩いた15年前と比べると隔世の感があります。

 

私の場合、平日一日に家で勉強できる時間としては、トータルでせいぜい1時間~1時間半くらいがいいところ。それに通勤電車内の時間が往復で1時間ちょっとあるので、その時間を当てようと思えば当てられる。ま、寝てることも多いんですが(笑)。

 

あとは細切れ時間を合計すると一日当たり、1時間くらいにはなるんじゃないかというのもあるので、そういうのもいれて、何とか一日3時間は捻出してみようと思うようになりました。細切れ時間で、論文は書けませんが(笑)、語学を勉強するのにはいいかも。何とかやりくりして、救済措置として与えられた4年間を活かしていきたいと思ってます。

*1:博士課程には6年間在籍できます

*2:論文博士というのもありますが、文系の場合は、すでに著書を出していて学会でも著名な方が取る雰囲気がありますので、私の場合は再入学しかなさそうです(^^;

2月の読書

世界哲学史シリーズ、楽しみにしています。2巻目まで読みました。

 

www.chikumashobo.co.jp

 

1巻目。個人的には、やはり『ミリンダ王の問い』ですね。ギリシア王メナンドロスと仏教僧ナーガセーナ長老の問答。現存しているのは仏教経典としてのテキストで、その関係でメナンドロス王は仏教に感服して帰依したことになってます。しかし、原典はギリシア人がギリシア語で書いたと言われており、だとしたら、内容的にどうなっていたのか⁈気になるところではありますね。

 

世界哲学とか比較思想って、あまりに壮大すぎて、それぞれの分野の研究者からの評判ってあんまりよろしくないというのが一般的だと思いますが、そういう中でこうした試みを新書で出すあたり、すごいことだと思いますし、今後もこうした動きが活発になってほしいと思ってます。個人的にはこういうのは興味を持ってるんで。

 

furuhon-ya.hatenablog.jp

furuhon-ya.hatenablog.jp

 

 

 

2月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:1085
ナイス数:1

世界哲学史1 (ちくま新書)世界哲学史1 (ちくま新書)感想
ヤスパースの枢軸時代、それぞれの地域で共時的に哲学的な営為が起こったというのは非常に興味深いところ。本書は、そのヤスパースも構想していた「世界哲学」という壮大な構想を、各地域ごとにそれぞれの専門家が概説するというもので、第1巻の本書は人間の生命原理としての「魂」について各地域ごとに解説されているように思われる。それにしても、ギリシアとインドが出会ったという『ミリンダ王の問い』、原典はギリシア語だったらしいというのが非常に興味深いところ。
読了日:02月25日 著者: 
ミリンダ王―仏教に帰依したギリシャ人 (Century Books―人と思想)ミリンダ王―仏教に帰依したギリシャ人 (Century Books―人と思想)感想
ギリシア哲学VSインド仏教という、注目の東西両思想の対決を今に伝える『ミリンダ王の問い』。テキストとしては、漢訳『那千比丘経』とパーリ語ミリンダ・パンハ』の二つが現代に伝わっているが、その原典は仏教に帰依したとされるギリシア人の間で、ギリシア語で書かれていたという。無我論と業果の主体、または輪廻の主体という問題について、両者の問答が展開されるが、両者の間で本当に議論はかみ合ったのか?問答は何語で行っていたのか?いろいろ興味深い点が多いと思う。
読了日:02月25日 著者:森 祖道,浪花 宣明
哲学初歩 (岩波現代文庫)哲学初歩 (岩波現代文庫)感想
どうしたら”よい”生活ができるか?それは富や権力、名誉…など、”よい”とされるものを所有することではなく、それらを(智によって)いかに活かし、正しく用いるかである。そうした智を愛し求めるのが哲学の原点だというのを教えられた。名著でしょう。
読了日:02月26日 著者:田中 美知太郎
時間がない人が学び続けるための知的インプット術 (ディスカヴァー携書)時間がない人が学び続けるための知的インプット術 (ディスカヴァー携書)感想
5分でも10分でも何もしない無駄な時間を作らないという隙間時間の勉強法とその活用の仕方というのは参考になった。まさに塵も積もれば山となるという時間の作り方は在野研究者にとっては非常に有益だ。本書の中で触れられている先人たちの勉強時間の確保の方法、たとえば宴会スルーの仕方とかも興味深かった。
読了日:02月29日 著者:三輪 裕範

読書メーター

研究の進展⁉

私が読んでいた貝葉写本ですが、途中から別の経典に入れ替わっていて、それが何の経典か分からず、考えながら、ずっと調べていました。大乗経典だというのは分かるんで、何だろうと思って…。

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画像の一番上一行目からですが、evam mayā śrutam ekasmin samaye bhagavān rājagṛhe viharatiという仏典の導入句から始まります。

 

先日、その当該経典が何か分かり、おぉー!これは新しい発見だ!と一人舞い上がっていたのですが(笑)、後になってその写本のデータベースのタイトル名をよく見ると、その名が付されているではありませんか!

 

なんだよ…(笑)今までの苦労は何だったんだ…(苦笑)

 

ま、ともかく、その経典が何かはっきりとして、スッキリしました。今後はその経典との関係について調べたら、何か新たな発見や展望があるかもしれないわけですし、一応進展したと考えることにします!

 

 

それはそうと、最近、個人的に気になっていた注目の本が出て、早速購入して読んでます。

世界哲学史1 (ちくま新書)

世界哲学史1 (ちくま新書)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2020/01/07
  • メディア: 新書
 

 

世界哲学史2 (ちくま新書)

世界哲学史2 (ちくま新書)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2020/02/06
  • メディア: 新書
 

 

凄い企画ですね。

写本の調査

私の読んでるテクストは、写本が多くあります。唯一の校訂テキストが参照していないものも多い上に、その校訂テキストも厳密に各写本の異同について記していないため、いちいち各写本を見る必要があります。

 

東大にあるものだけでも13種あり、それ以外にもイギリスやドイツにもまだあります。

 

東大のは一つだけ貝葉写本があって、それが一番古い時代のものです。

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あとは皆近代のもの。字体も違いますね。

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この辺は現代の字体に近くなりますが、貝葉写本は読むのに時間がかかりました。 

 

最近は各写本についてその概要をまとめて、一年の終わりの研究報告書として準備しておりました。

 

サンスクリットだけでも辛いですが、チベットの註釈書か見ると、目が疲れてきますね。老眼には辛いです(笑)。

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「あさって」の方へ

久しぶりの投稿となります。

 

正直、こちらのブログはもう辞めようと思っておりました。同時に博士論文の方も…。満期退学後、研究員となりはしたものの、思うように研究時間を確保できず、時間ばかりが過ぎ去っていく中で、研究に対する意欲が著しく低下しておりました。

 

そんな中、最近になってまたやってみるかと思うようになった契機がいくつかありました。

 

一番はこちらですね。

 

在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活

在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活

 

 荒木さんの本は、『これエリ』以来だ。

 

あの時も随分と励まされた気がしましたが、今回も行間から、背中を押された気がした。

 

在野研究には明日がない。明日は、労働や育児や家事や病院通いといったもろもろのスケジュールで埋め尽くされているから。生活のルーティンや雑事のせわしなさが優雅(と想像される)研究時間をことごとく奪う。未来の空き時間が一瞬の隙も与えずに現在の係累によって占領されてしまう。

 

それでも、「あさって」ならばある、「あさって」こそあると、信じている。

 

明日の明日は二重の意味で到来する。知識不足や指導者の不在によって、その研究がなんの価値をもつのか、誰が評価するのか、正しいことを述べているのか、まったく見当もつかないのにそれでも突き進む頓珍漢でジグザグな方向として。

 

(中略)

 

未来を勝手に望見する明日以上の明日。超明日として。あさっての方へ。

 

試行錯誤の逸脱と遠回りを甘受しながら、在野研究者は「あさって」の方へ進む。

 

本書で紹介されている方々の様々な実例が、大いにヒントを与えてくれた。全ページにマーカーを引きたいと思うほど(笑)。それとともに、現状の自分にできるところから積み上げていけばいいんだ、と諭された気がしました(^^)思えば、次の論文に対するイメージを掴みかけた(と思っただけかもしれませんがw)ところだった。そういうアイデアから、実際に論文という成果につなげていくところが学問の醍醐味ですよね。

 

これまでに出した論文は以下の4本。あと、もう1本書きあげてみたい。

 

 

ci.nii.ac.jp

ci.nii.ac.jp

ci.nii.ac.jp

ci.nii.ac.jp

 

ブログのタイトルも「研究日誌」に戻しました。

 

 

学ぶことはいつだって、どこでもできる。

 

何度でもやり直せばいいじゃないか。

 

ガンダーラ 仏教文化の美と形 

松戸市立博物館で催されている特別展「ガンダーラ 仏教文化の美と形」に行ってきました。

 

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内容は、龍大はじめ国内にある、数々の所蔵品を集めて展示されていて、なかなか興味深いものでした。松戸市でもいくつか所蔵されてるんですね。なかには、撮影OKのところもあり、こちらの菩薩半跏像を記念に撮らせてもらいました。

 

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あとは、ブラーフミー文字サンスクリットで書かれた文字があるこちらの壷も展示されてました。「説一切有部」という名がはっきりと見えます。

 

 

その他、カローシュティー文字のガンダーラ語碑文(1世紀頃)はその頃にガンダーラ地域で、舎利供養が広まっていたことを示していますし、カニシカ王1世の金貨にはギリシア語で「ブッダ」、「弥勒」という文字があり、当時そこにいたギリシア人が仏教を信仰していたことを示しています。 なかなか興味深いものですよね。

 

 

今月の25日まで開催されてますので、お近くの方は是非そうぞ!実は私も店のお客様から教えていただきました。

 

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