古本屋の研究日誌

古本屋として働きながら博士号を取得するまでの軌跡

書籍の紹介

うちの書店にありますサンスクリットの文法書のご紹介です。

梵文典―表解詳説 (1958年)

梵文典―表解詳説 (1958年)

店に置いてますと、皆さん、特大サイズ(37×26cm)で、重量のある(約5キロ)この本を、結構お手にとってご覧になられてます。ま、珍しいといえば、珍しいのでしょうからね。でも、その値段と使い勝手を考えると、購入される方はまだいらっしゃいません(笑)。昔はこの本、古書価で10万円(!!)くらいしてたようです。今はそんなにしないと思いますけど。画像のものは、函(ケース)がなくて、クロース装・天金の本のみとなってます。本巻は、717ページで、片手で持ちながら、調べものをするというわけにはいきません(笑)。別冊は121ページで軽いんですが。

サンスクリットの文法書としては、一番詳しいのでしょうか。

この本の緒言に、次のようにあることから、内容の方が推量れます。とにかく、変化表は全部表になって出てますね。

Macdonell氏の文典全巻を表化し、次でWhitney氏の文典や榊・荻原両博士の文典を精読してこれを補修し、昭和九年五月成田に来ましてから、福島・田中両氏共著「佛教大学講座」中の梵語文典、Monoier-Williamsの文典、更にBenfey,Geiger等々諸氏の文典に徴して、或は加へ或は除き、面倒複雑な諸規則諸変化諸活用を、如何すれば、分り易く、一目瞭然たらしめ得るか、と運心工夫、時に主力は専らこの方面に注がれ、改稿数度、浄書再三、「内外連声総合表」をこしらへてみたり、「主要動詞二百五十の全活用表」をこしらへてみたり…

著者は、明治41年に日比谷図書館での勤務に就かれ、仕事柄、各国の梵語文献に接するにつけて、日本における榊・荻原両氏の著作をもうちょっと時代に適応させようと、この書物の執筆を思い立ったと、この緒言で述べてます。

当初は、その「主要動詞二百五十の全活用表」の他、「語彙(小辞書)」、「Skt.文典略史」、「印度文字」、「Vedaの神神」、「天啓文学及び聖伝文学概観」などを別冊の方に入れる予定だったようですが、紙面の都合から、それらは割愛されたようです。仮に、それらが別冊に加われば、本巻のような厚さになってしまったんでしょうね。

何か、もうちょっとコンパクトにして(せめてB5判くらいまで)、巻数を増やして、値段ももっとお手頃にすれば、有益になるはずじゃないかな、という気がしますね。豪華本(天金)にしちゃって、図書館や研究室に収まってしまい、勉強する個人が求められないのでは…残念な感じがします。

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