古本屋の研究日誌

古本屋として働きながら博士号を取得するまでの軌跡

唯識文献

卒論の口頭試問も終り、あとはその評価と卒業式を待つのみとなりました。現在は、3月20日締め切りの修士論文の研究テーマ書を作成中です。一応、瑜伽行唯識派文献が研究テーマとなるとだけ言っておきます(笑)。

唯識思想論考

唯識思想論考

総頁840頁、価格が1万6800円ということで、なかなか手をつけられずにいた本ですが、一応大学院に進むにあたり、手元に置いておいた方がよかろうと思い、購入しました。早速、「インド仏教思想史におけるYogAcAraの位置」という、本書における書き下ろし論考をパラパラと・・・。

実は、先日の口頭試問の際に、この本に収められている論文の話になり、副査の松田先生が昨年お書きになられた、この本に対する書評(抜刷)を先生からいただいたのでした。松田先生も「唯識文献を研究し、その思想を追求するというのであれば、本書に収められた十八編と序論を読まずしてそれを行うことはありえないことである」と述べられてます。

さらに、その書評の中でご指摘されてることですが、唯識派文献をめぐる状況というのは、今後劇的に変っていくことが予想されるそうです。

と言いますのは、『瑜伽論』の「摂決択分」の原典写本が、近い将来か遠い将来かはわかりませんが、いずれ完全な形で公開される可能性が高いからなんだそうです・・・*1。となりますと、そこに全文引用されてる『解深密経』も梵語で読むことができるようになり、そうなりますと、唯識の研究というのもだいぶ進むことになるというわけなんです。

いつか『摂大乗論』の原典写本とかも出てくるんでしょうか…。

*1:現在ロシアのサンクトペテルブルクに保存されてる『瑜伽論』の「摂決択分」梵文写本断簡の残りの部分がラサにそっくり残っているそうなのです。