以前この本を読んで興味を持ち、知人の薦めもあって、最近折口信夫の『死者の書』(asin:4122034426)を読んでみました。同書は、日本の土着信仰の上に仏教という新しい知が入ってきて、その新しい知が古代的思考と如何に連続性を持って受容されていったのか、それを学問という形ではなしに、小説という形で描いてみせたものです。そこでは、山越阿弥陀図などの浄土教の来迎図というのがポイントとなるのですが、従来造形的に神を表現しなかった古代人の感性が、いかにして仏の姿を感じ取り受け入れていくか、その点がどう描かれているのか興味深いところ。
あと、面白いのは、その(未完の)続編もあって、それが仏教と神道だけでなく、キリスト教と仏教の習合、あるいは、そうした個別の宗教という狭い枠組みにとらわれない普遍的な宗教を描こうという意図があったらしいということです。神道の宗教化も含め、折口のそういう宗教観というのは、中沢氏も言うように興味深いところです。中沢氏のこの本は、数時間で読み通すことができるようなやさしい入門書で、お薦めだと思います。
- 作者: 安藤礼二
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/05
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 20回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
最近、こちらを買いました。折口・死者の書の続編を描いたというもの。
そういえば、山越阿弥陀図というのは、仏教文化の科目最終試験にもつながってきます。いろいろなバリエーションがある山越阿弥陀図について、それぞれの比較考察をするというもの。禅林寺本のような初期のものから、早来迎と言われるような迅速性を前面に出した来迎図へ変化していった背景についてまとめるというわけなんです。