古本屋の研究日誌

古本屋として働きながら博士号を取得するまでの軌跡

始動

もう正月気分も終わりということで、そろそろ狂った生活リズムをもとに戻さねば…。それはそろそろ勉強しないと…ということを意味するわけで、昨日あたりから少しずつ取りかかる。まずは、年末にやっていた最後の大乗涅槃経の梵語写本についてのレポートの仕上げ。英国インド省図書館の未整理写本の中に大乗涅槃経の梵文断簡があり、それについて漢訳との相違点など少々まとめる。その断簡中には、あの平家物語の冒頭の文章(祗園精舎の鐘の声…)の基となったと言われる、盛者必衰の理を示す、涅槃経の中でも有名な一節の梵文偈頌(10頌)があります。チベット訳は梵文に沿って訳されているようですが、漢訳(特に六巻)の方は自由に訳されていて、よく分かりませんね…。


たとえば、梵文第1偈・和訳*1

寿命多しと言えど消失に至り、すべてのもの、ここに必ず死すべし。繁栄はすべて不幸に傾斜し、実に生者の世間は破滅を性質とする。

漢訳・『大般涅槃経』40巻(「北本」)の方は、

一切諸世間 生者皆歸死 壽命雖無量 要必有終盡 夫盛必有衰 合會有別離


これだとまだ私には分かりますが、『大般泥洹経』(「六巻泥洹経」)の方は、

正使久在世 終歸會當滅 雖生長壽天 命亦要之盡 事成皆當敗 有者悉磨滅


漢文の教養が乏しい私には難しいですが、こちらの方は原典からは自由に訳しているようですね…。

*1:和訳はそのまま、松田先生の『インド省図書館所蔵 中央アジア出土大乗涅槃経梵文断簡集』東洋文庫より