古本屋の研究日誌

古本屋として働きながら博士号を取得するまでの軌跡

死者の書(岩波文庫)

今日書店にて見つけました。安藤礼二氏による注解を伴った『死者の書』が続編と「口ぶえ」を伴って文庫化される。何といっても、昭和18年刊の初版と同じこの表紙のデザインがいいですね。この「オシリスの霊魂」は、大正9年に英語からの重訳で出版された世界聖典全集のエジプト『死者の書』の図版から選ばれて、初版の表紙に飾られたそうです。それを表紙にすることで、浄土三部経にいう「日想観」と世界神話との習合、和漢洋の死者の書が重なる姿を幻視していたといわれてます。『死者の書』続篇でも、キリスト教ネストリウス派がアジアに伝播した景教と空海によって伝来された大日如来の曼荼羅が融合するというのが描かれていますし。


先日の洋書会に出された詩集・句集関係の和書の一口ものの中に、世界聖典全集の『死者の書』と折口の『死者の書』初版は含まれていて、仕分けの最中に気に留めていただけに、書店でこの表紙を見たときはちょっと驚きました。岩波文庫で黒い表紙カバーっていうのも、驚きですね。


死者の書・口ぶえ (岩波文庫)

死者の書・口ぶえ (岩波文庫)