古本屋の研究日誌

古本屋として働きながら博士号を取得するまでの軌跡

教科書の中の宗教

教科書の中の宗教――この奇妙な実態 (岩波新書)買いました。公正・中立であるはずの教科書の中で、知らず知らずのうちに、宗教間に優劣をつけて記述がなされていたり、何らかのバイアスがかかった記述があるという問題。それはなにも異なる宗教間だけではなく、例えば、日本は大乗仏教の国であるためか、上座部仏教=自分のことしか考えない仏教、大乗仏教=自分+他人のことを考える、慈悲の仏教、という(安易な)勝利者主義史観・図式はよく見られるものです。


そして、仏教=慈悲、キリスト教=愛、という割り切りすぎた記述の問題も。本書の中にもありますが、「慈悲」というのは大乗仏教に至って概念が中心化されるもので、それをもって仏教の代表的な教えであるかのように謳ってしまうのはどうなのか?ということですね。何気ない記述も、よく考えてみれば、何らかの特定の位置に立ったものになってしまっているわけで、教科書の中にはそういうのが結構潜んでいるというのです。


ま、しかし、限られた狭いスペースで、宗教を中立的に記述するというのはかなり面倒なことで、気を使うものだというのは分かりました。と同時に、そもそも、そうした中立的な立場というのは有り得るものなのか?なんだかムズカシイ問題を見てしまった気がします…。