最近こちらの論文をようやく読み終わりました。はじめはちょっと取っつきにくく、細部でよく分からない部分も多く、読み通すのに時間がかかってしまいました。しかし、その内容については興味をそそられるものでした。
経典は匿名の著者によって、いろいろと改変が為されていくわけですが、韻律というのに注目すると、改変した著者の痕跡を辿れるのでは?というのがその内容です。様々な文献を例に挙げながら解説してて、そのデータにちょっとよく分からないところもあるんですが、ともかく、韻律が話者の何らかの個人的属性を反映したものだとすれば、その違いによって複数の著者の関わり、改変の痕跡が見えてくるようです。その観点からすると、私が今読んでいる『楞伽経』にも少なくとも5人の著者が想定されるのだとか。
韻律って、通常、文法の授業だと最後の付録みたいな感じであまり詳しく解説されませんし、各文法書でも似たような取り扱いになってますね。でも、改めていうまでもないですが、昔のインドの作品は口承によるものなんで、韻律とかアクセントはかなり重要です。もっと詳しく取り上げられてもいいような気もしますが…。というわけで、私にとっては完全に独学で、体系的な知識を得ようとするとアプテの辞書・巻末のApendixに、詳解なリストが挙げられてますので、それを見るわけですが、初めてそれを見た時は、その字の小ささ*1と、種類の多さに呆然となったのを思い出します(苦笑)。
こちらも参考になります。ナラ王物語はほとんどがシュローカですが、シュローカでも、各脚の組み合わせによっていろいろなヴァリエーションがあって、その組み合わせからも見えてくるものもあるんですね。ともかく、韻律についてはもっと勉強して、上述のような論文を書いてみたいと夢想している今日この頃です(笑)。
ナラ王物語―サンスクリット・テクスト、註解、語彙集、韻律考ほか
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