古代金属国家論
先日、書店に立ち寄った時にこちらの本を見つけ、立ち読みで読み終えちゃうくらいの薄い本でしたが、内容が内容なだけに買っときました。
元版は、1980年に出たもので、その復刻になります。
日本の平野の真ん中に点在している闇の空間である霊山にいる山伏。
彼らは、古代空間において、決して、単なる宗教家、呪術者というだけでなく、高度な科学技術者として様々な文化の担い手になっていたという。そして、その科学技術(とくに金属資源)というのが当時の国家権力の根本を支えるものであって、奈良の大仏造営や、奥州藤原氏の平泉黄金マンダラなどに結晶していく。
考えてみれば、古代日本呪術の震源地である葛城から生駒にしても、出羽三山なんかにしても、みんなそこが鉱物や薬草など植物の産地になっている。古代金属文化論という視点に立つと、そこをアジールとし、当時の先端科学である煉丹術にも精通していた山伏の存在を、国家権力が野放しにはしておけなかったのだろう。実際に、高僧のミイラ、即身仏というのに、中国道教の古代化学の痕跡が見られるそうだ。
この本を読んで、こちらを思い起こす方も多いと思います。
佐藤氏といえば、密教が錬金術と深い関係にあり、それをインド古代科学技術にまで遡って解明されていることで有名だ。
しかし、こうした佐藤氏の著作に先駆けて、冒頭のような本が出てるいたのには驚いた。しかも、内藤正敏氏は理工学部出身で、山伏の修行経験もある異色の写真家で、これ以外にも興味深い著作をいくつも出されている。