大学院紀要に掲載の論文が公開されました。
本稿では、『ヨーガ・スートラ』、『ヨーガ・バーシュヤ』と時代的に近く、共通する語も多い『楞伽経』との関係に注目して、その影響関係について、他の瑜伽行派の文献も視野に入れつつ、cittaの定義を中心に考察する。その結果、『ヨーガ・スートラ』と『ヨーガ・バーシュヤ』、『楞伽経』におけるcittaの定義には、共通する部分が多いことを確認でき、三者の間に密接な影響関係があっただろうということが分かった。そうした『ヨーガ・スートラ』との共通部分は、『楞伽経』の原型であり同経の素材集ともされる「偈頌品」中に比較的近い形で見られ、本文中ではそれをさらに発展させていることも分かった。以上から、『楞伽経』を作成した人物は、瑜伽行派の正統派というよりも、むしろヨーガ学派と親密な関係を持った人物であり、『ヨーガ・スートラ』と共有する部分を、唯心思想としてさらに発展させていったのではないかと推測されることが分かった。
ご批判、ご感想、お待ちしております。