ちょっと前になりますが、エドウィン・アーノルドという英国詩人の“The Light of Asia”という本が入荷しました。初版は1879年にロンドンで出たものですが、これは1932年にアメリカで出た版です。W.ポガニーという、古書業界でも有名な挿絵画家による表紙、挿絵が、本の魅力を引き立てています。
この本が出た当時(1870年代)というのは、イギリス(というか西洋)ではまだ仏教に関する一般書は皆無だったようで、一般的には殆ど知られてなかったようです。そういう状況下で、たぶん『ブッダ・チャリタ』あたりを下敷きにして?ブッダの生涯を美しく謳いあげたのが本書です。どちらかというと、文献を根拠に学術的に検証された“ブッダ像”に基づいて書かれたというよりは、当時のイギリス人が理想としていた聖者像(西洋の騎士道)に結び付けて、文献の言葉を自由に膨らませたという感じでしょうか。
そういうこともあってか、欧米ではかなりウケて、この詩は次々と版を重ね、そして挿絵画家にポガニーを起用するまでになったのでしょう。ポガニーといえば、数々の童話の挿絵も手がけてますが、ルバイヤートの挿絵が有名で、そうしたオリエンタリズムの中で、ブッダの生涯が紹介され受容されていったことをこの本は示しています。
でも、こういう西洋騎士道をもとにした釈尊像というのは日本にも逆輸入されるわけで、この本の影響力というのは無視できないのではないでしょうか。邦訳は岩波文庫として「亜細亜の光」が戦前に出てますが、それ以降は再版されてないようですね。私は見たことありませんが、仮に再版されたとしても、文語調のお堅い日本語より、もっと現代的な訳で読みたいですが…。
ちなみに、西洋における仏教の発見等々については、こちらに収められている下田先生の「近代仏教学の形成と展開」が参考になります。
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あとは、こちらも。
The British Discovery of Buddhism
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