大乗経典の誕生
平岡先生の新刊が出ましたので、早速買いました。
大乗経典の誕生: 仏伝の再解釈でよみがえるブッダ (筑摩選書)
- 作者: 平岡聡
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/10/13
- メディア: 単行本
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大乗仏教の起源・誕生については近年いろいろと熱く議論されているところです。本書はその辺にももちろん触れながら、「仏伝」の再解釈、原点回帰としての大乗経典に焦点を当ててます。初期経典、それも古層とされているところでは、ブッダ以外の仏弟子も「仏」と呼ばれ「ブッダ」は普通名詞として用いられていたようですが、のちにブッダの神格化や教団の組織化によって固有名詞化され、唯一の存在となります。伝統仏教のブッダ至上主義に対して、誰でも仏になれるというのは、そういう意味で、いわば原点回帰ということになるようです。そこで、新たな経典を作るに際して、仏伝を手本にし、そこから再び菩薩と、その菩薩になるためにはブッダに会わなければならないというわけで、不滅の法身思想が出てくるところなどを近年の仏教学の成果を取り入れつつ、丹念に解説されてます。
個人的には、そうした大乗経典は一体誰によって作られたのか?という問題の方にむしろ興味はあります。本書でもその辺は最後の方でちょっと触れられてます。平川説以降、最近では出家者との関わりに注目が集まっていますが、現段階では、単一部派の出家者が作ったのではなく、むしろ部派を超えた複数の出家者たちが関わっていたとされています。それは、大乗経典が書写経典であったとされるのにも関連がありますが、部派を超えて(大乗)経典が閲覧できる状況下で、テクスト間のハイブリッド性の中から、大乗経典は生まれてきたのだろうと本書でも結論づけられてます。
今後も更なる研究が俟たれるところです。