古本屋の研究日誌

古本屋として働きながら博士号を取得するまでの軌跡

「スパム・メール」をサンスクリットで言うと

先日、友人のインド人が、サンスクリットについての面白いラジオがあるから聞いてみて、とCDを貸してくれました。オーストラリアのABC Radio Nationalのある番組のようで、早速聞いてみましたが、私のヒアリング能力ではイマイチよくわからなかったので(笑)、ネットで探してみたところ、そのTranscriptを見つけました。「The perfection of Sanskrit」と題するもので、オーストラリア国立大学のマコーマス・テイラー氏のサンスクリットにまつわるお話。その中にサンスクリットと宇宙創世について話があります。

サンスクリットの起源について、学術的な見解と、インド人が伝統的に考えているものと二つあるといいます。学術的な見解というのは、例の印欧祖語にさかのぼるというやつですが、面白いのはインド人が従来考えているもの。

Before the universe existed, there was Sanskrit. And it was the sounds of Sanskrit that brought the universe into existence. First came the mystical syllable, OM. Then came, Bhur, which brought the earth into being, then the syllable, BhuvaH, created the air and finally, zvaH, created heaven. These four Sanskrit syllables, Om Bhur bhuvah savaH, created the entire universe.

宇宙が生まれる前、サンスクリットがあった。そこに、いわゆる聖音(OM)が起こり、次にBhur、BhuvaH、zvaHという音が起こって、宇宙が生まれるというもの。インド人によれば、世界中に様々な言語がありますが、全てはサンスクリットから来ているのですね。例えば、「木」というのは英語で「tree」、ドイツ語で「baum」、中国語で「yi-ke-shu」・・・etcであっても、本質はサンスクリットの「vRkSah」だと(笑)。ま、似たような例で、ローマというのが、『ラーマーヤナ』の「ラーマ」という言葉に由来するとか、キリストの「アーメン」が「オーム」に由来するとか、聞いたことありますが・・・。

それにしても、世界が生まれたとき、案外そういう「音」(OM Bhur BhuvaH zvaH)を伴っていたのかもしれませんね。実際に音で聞いてみるとそんな気もしてきます。

現代インドでも少数ながら、サンスクリットを話したり、新聞やらの定期刊行物もあるそうで、現代の言葉を表現することも可能だとか。例えば、「スパム・メール」をサンスクリットで言うと、aniSTavidyutpatramになるんだとか。直訳すれば、「望まれない(aniSTa)稲妻の*1(vidyut)、手紙*2(patram)」(笑)。なかなか詩的でよろしいかと。

*1:転じて「電子の」ということになるみたい

*2:元々は「葉っぱ」ですが、インドでは葉っぱに文字を書きますから。