古本屋の研究日誌

古本屋として働きながら博士号を取得するまでの軌跡

師走ですが

三島由紀夫 幻の遺作を読む もう一つの『豊饒の海』 (光文社新書)12月らしからぬ天候が続いてますね。しかし、早いもので、今年もあとひと月ですか…。そんな中、以前触れたこちらを読了。三島と唯識というテーマで結構面白いんじゃないですか。著者によれば、『豊饒の海』のテーマとして、戦後日本でピークを迎えるニヒリズムが背景にあって、そうした虚無に対する救済が如何にしてなされるのか、というのがあったんじゃないかと言います。そして、そこに輪廻転生、唯識思想が結びつく。それは、インドにおける輪廻とは正反対の、救済の理念としての輪廻(永続する生としての時間的連続性)であるようです。三島は、『豊饒の海』を執筆する以前にそうした輪廻観をもっていたようで、そこに阿頼耶識を結びつけようとしているところがあります。それは仏教の説くものとは若干異なってきますが、あくまでも文学作品の下敷きとして考えていただけなのでしょう。そして、幻の第四巻。賛否両論あるかもしれませんが、個人的には面白かったです。


次に、修論の方は、今チベット訳をもとにして、『楞伽経』の「偈頌品」について再び訳を点検してみようということをやってます。『楞伽経』のチベット訳は、一応デルゲ版がオンラインで見れることになっているのですが(こちら)、初めは探している偈が一体どこにあるんだ??というトホホな状態でした(笑)。割と最近の話です(^^;


ともかく、そういう作業をやってますと、チベット語のボキャブラリーが増え、勉強になるなぁと実感する日々。「偈頌品」には偈が800超ありますので、その作業を終える頃には、私のチベット語力も少しは上がっていることでしょう。といって、全部読むわけではないんですがね…(^^;;