光炎菩薩大獅子吼経
知人に聞いたのですが、来年2月公開予定の映画で、“ニーチェの馬”というのがあるそうです。原題は“トリノの馬”ですが、ニーチェが晩年イタリアのトリノを訪れて、通りで馬が御者にひどく鞭打たれているのを見かけてそれを止めに入り、その後発狂したというのにちなんだものだそうです。あらすじとしては特にどうっていうものではないのですが、映像美、カメラワークなど期待できる作品のようです。
さて、光炎菩薩大獅子吼経ですが、先日たまたまこちらを入手しました。ニーチェの『ツァラトゥストラ』、大正10年に出された登張竹風訳です。タイトルはなんと「如是経 一名 光炎菩薩大獅子吼経 序品 つあらとうすとら」!光炎菩薩というのは拝火教教祖ゾロアスターにちなんでるのでしょうが、タイトルを見てお分かりの通り、仏典風のツァラトゥストラです。しかも、ツァラトゥストラを親鸞に見立てているのが本書の特徴です!!他にも高山樗牛がニーチェの思想を(田中智学経由の)日蓮風に解釈していますが、この時代、ニーチェは仏教改革運動の中で新しい宗教思想として紹介されていたというのもあるようですね*1。それに、樗牛の日本主義と相俟って、鎌倉仏教の祖師たちに重ね合わせられたのでしょうか?なんとも興味深いところです。
その後昭和にはいってから、その「如是経 序品」は再版されますが、さらに全訳として「如是説法ツァラトゥストラー」(参照)というのも出てます。それら一連の作品は、岸田劉生や青山二郎などの装丁とあって、東洋風でどこか気品ある本に仕上がってますね。何かちょっと違う気がする…のは気のせいでしょうか(笑)。