古本屋の研究日誌

古本屋として働きながら博士号を取得するまでの軌跡

電子書籍と仮綴本

先日、知人との話の中で、最近本の「自炊」というのが流行っているという話になりました。自炊とは本を解体、スキャン・PDF化して、自ら電子書籍化するということ。ipadkindleなどが発売されて以降、電子書籍というのはかなり話題になってますが、自炊すれば管理も楽だし、何よりも本棚や書庫が要らなくなるということで魅力を感じるわけです。検索してみると、自炊の仕方の動画などもあって、代行業者なるものも存在しているんですね…。それはさすがにマズイんじゃないかと思うわけですが、心惹かれるサービスであることには間違いないですね。


私の本も、いっそのこと自炊してしまえばいいのでしょうが、休みの日や深夜にせっせと裁断するのも気が進みませんが、裁断した後の本(というか、頁の束)を捨ててしまうというのもできない気がするんですよね。それは本に対する気持ちの問題でもありますが、それよりも、スキャンしたデータのバックアップを考えると…結局取っておこうということになりかねないことが予測されるからです(笑)。とりあえず、個人的には論文のコピーの山でしょうか。昔コピーした論文を再読しようとして、今どこにあるのか、そもそもコピーしたのかどうかさえもわからなくなっている現状を考えると、個人的にはかなり切実で、その辺を電子化するだけでかなりすっきりするとは思います。


何はともあれ、これからは裁断された後の頁の束を古本屋に売るなんてこともあり得るのでしょうか…?でも、そういう意味では、フランスの仮綴じ本文化というのは、現代にも相通じるものがあるように思えますね。つまり、本を買うというのは、中身のデータそのものを買うのであって、買った後の製本や装丁は各自で好きなようにやるというのですから。


さて、先日こちらの本を購入。

近世の仏教―華ひらく思想と文化 (歴史文化ライブラリー)

近世の仏教―華ひらく思想と文化 (歴史文化ライブラリー)


一昔前から、日本仏教といえば鎌倉新仏教というのがあり、それを頂点にして、近世の仏教は堕落して、幕府の手下になってしまったというイメージが出来上がってしまいました。しかし、中世の仏教の主流はあくまでも旧仏教であり、新仏教はむしろ周縁的な存在であったように、近世の仏教も決して堕落したものではなく、独自の思想的・実践的展開があったという、新たな近世仏教像を提示しようという試み。ちょっと立ち読みして即買ってしまいました。大変興味深いです。