早速こちらを購入して読んでみました。

- 作者: 高崎直道,桂紹隆,下田正弘,末木文美士,斎藤明
- 出版社/メーカー: 春秋社
- 発売日: 2011/12
- メディア: 単行本
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特に、下田先生の「経典を創出する−大乗世界の出現」(第2章)を興味深く読みました。
従来の研究によれば、大乗経典を作り出した担い手として、何らかの独自の教団なり集団を想定してきました。ま、そう考えるのが自然ですが、そうだとすると、歴史的な事実とは相反することになるわけです。むしろ、初期大乗の時代にそうした大乗教団はなく、経典のみが部派教団内部に静かに存在していたのだ、と。そして、後代になってその経典が外部の世界を変貌させ、大乗教団が生まれていくという点について興味深く考察されています。
本書によれば、大乗仏典の誕生にとってのターニング・ポイントは、経典伝承における書写の導入にあります。書写された経典の場合、ただ機械的に伝承していった口伝の場合と異なり、真の仏説とは何かという本質的な問いを生み出すといいます。また、仏説の正統性はただ経典のみにあり、それが、結果的に次々と経典を作成させていった原動力にもなったのだと。この辺の推察も面白い。
経典が教団を作ったというのは、逆説的に聞こえますが、例えば、中国や朝鮮、日本など、もともと仏教がなかったところに書写経典が入ってきて、それをもとに教団ができていったのを考えると、真実味を帯びてくるように思います。そして、インドにおいて大乗教団が生まれたのよりも早く中国で生まれていた可能性が高いという指摘にも肯けました。昔勉強したような初期大乗仏教像とは異なるイメージが開けてきますね。むしろ、大乗仏典の作者は部派内部の経師だったと言われてますが、部派によっては大乗を容認していたのもあれば、そうでないものなど、いろいろ併存していたのでしょうね。
ともかく、何かミステリーでを読むように、本書を読みました!